グリーン・リカバリー
コロナ後の社会を考えるうえで、<グリーン・リカバリー特集>というタイトルに惹かれて雑誌「世界」8月号を読みました。様々な専門分野からの10編の論文が特集されています。
まずは「コロナ・パンデミックと『歴史の教訓』」(進藤栄一)は、「感染症パンデミックはいつも、地域を越えた通商の迅速な発展と長期にわたる戦争、そして環境破壊と、それぞれ裏腹の関係にある。」という言葉で始まり、14世紀と17世紀のペスト・パンデミック、20世紀初頭のスペイン風邪は世界を席捲した流行のあと、新しいグローバル・ガバナンスが登場する世界秩序の根源的な転換があったことを示唆しています。
それではコロナ危機は、何が課題で、今後どのような道が拓けるのか。「今こそ<健全な社会>へ」(中野佳裕)がそれに応えています。ここで言う健全とは、豊かさ(wealth) と健康(health)を本来の意味に戻すことで、論者によれば、「15,6世紀までは、wealthの意味は、happinessと healthと prosperity(物質的繁栄)を組み合わせた「健全で良質な生活」を意味していた。しかし産業革命以後、wealthはもっぱら経済的な「富」を意味するようになり、幸福と健康は後景に追いやられ、富、つまりモノとカネの追求が始まった」とのことです。産業経済の発展は地球規模で拡大し、「グローバルな複雑系」が形成され増大して、「いまや、ある一定の閾値を超えるに至っている。一定の閾値を超えると、資源やインフラの維持などの社会的費用が便益を超え、環境破壊や貧困、格差を露呈するばかりか、人間の生活の質を低下させる。グローバルな経済活動は、人々から自律性を奪い、商品経済に依存するしかなく、いったん経済活動が停止すると、人々の生活基盤は動揺する」。確かにコロナショックはそれを現実のものとしました。そこで論者は、今後はレジリエンスの高い<健全な社会>を目ざすことを提唱しています。グローバル化の下でのローカリゼーション、コミュニティ・エネルギー、社会的連帯と自然との共生、オルタナティブな経済活動など、地域循環型経済を形成することによって、人々が自律性を回復することができるとしています。
このほか自然科学者は、コロナ危機が人間による環境破壊、特に自然生態系の破壊によるものだと警告を発しています。 すべての論文を紹介することはできないのですが、上記の2論文の論調は、わがG&L共生研究所が目指している活動と重なっています。私たちの活動は、社会のほんのちっぽけな、いわばウイルスの様な活動に過ぎません。けれども、ローカルで地域密着型の活動からグローバルへの眼差し、時代を先見しリードする活動を細々と、しかしレジリエントに続けていきたいと思います。
コロナ騒動の中でも、追分のフィールドは、青く澄んだ空、爽やかな風、鳥のさえずり、四囲の深い緑など現実の騒動と隔絶した静謐な別世界であり、 wealth, health, prosperity を感得できる、しかも 共生、協働の活動の原点でもあるのですから。(木村記)
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